ふしぎの国のアリス エピソード

作品の内容ではなく、BDの品質について書きます。
私はこの映画のDVD版を持っていましたが、比較するもバカらしくなるほど今回のBDの画質は次元が違う美しさです。
いままで眠っていて目が覚めたのかと思うほどです。
鮮やかで豊かな色彩、セル画の塗りにはノイズもなく、アウトラインはきわめてシャープ。背景も緻密です。

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DVD版は暗部も黒くつぶれていて品が無い感じでしたが、今回は潰れず豊かで自然な階調が見て取れます。
また、フィルム上の傷や汚れも消え、細かな画面のゆれも無くなっています。
全体にかなり手の入ったリストアといえるでしょう。

ただ、意見が分かれるのではないかと思うのは、そうした補正によって元のフィルムにあったであろうアナログ感が消えていることでしょうか。
まずセル画特有の質感は消えています。ハンドトレスのラインにはとくに不自然さは感じませんが、ペイントには強く補正が入っています。
元々のセル画は単色に塗られているように見えても若干の色むらや滲み、セルを重ねることによる影やぼやけなど、特有の癖がありました。
しかし今回はそうした問題はキレイさっぱり消えうせています。
また画像に粒状感(グレイン)がまったく無く、画像の揺れも明滅も無いため、フィルムらしさも消えています。

問題はそれらを「味が失われた」と見るかどうかです。たぶんそう思う方もいるでしょう。
個人的には、セルの色むらやフィルムの揺れなどは製作者が意図したモノではなく、やはりこれもひとつの「アナログなノイズ」に過ぎなかったと考えています。
つまり今回のBDの画質こそが本来製作者が作ろうとしてつくり得なかったものと言ってもいいのではないでしょうか。
またそう考えざるを得ないもう一つの理由として、旧DVDにそれらが味わいをもって残されていたかといえば、それは違うということです。
DVDはデジタルならではの圧縮のノイズが非常に多く、むしろ強くデジタル特有の汚さを感じてしまうからです。
粒状感もコントラストを上げてシャープにしている弊害からか、アナログ的なやわらかさからは遠く感じられます。

結論として自分はBDの美しい画面に満足しています。映画を楽しむために捨てるべきこだわりは捨てた方が得ではないでしょうか。